【メキシコの絶景】なぜ、ダイビングの聖地セノーテの神秘と謎に魅了されるのか?

written by さいどん -かくめいメディア・クリエイティブ担当-

カリブ海にはセノーテから地下水脈が広がる

メキシコのカリブ海側にあるカンクンやトゥルムで世界でも人気の半島、「ユカタン半島」には世界でここにしかない石灰岩の陥没穴によってできた地下水脈の泉「セノーテ」がある。これは大昔、恐竜が絶滅したときにユカタン半島へ降ってきた隕石による影響であると言われているが、長い時間をかけて石灰岩の地形であるこの半島に雨水が流れ込むことで地下に空洞ができ、地下水脈を形成したことによる。日本人には馴染みのないものだが、ダイバーにとって世界で最もホットなダイビングスポットであり、観光地としてもメキシコで必ず行っておきたい場所の1つである。セノーテはこのユカタン半島に推定で10000もあるとされているが、発見されているセノーテは5000ほどだ。この中でも、観光客が訪れることができるセノーテは少しだが、ダイバーが命をかけて開拓したルートに沿って、ガイドと共に神秘の世界を体験することができる。今回の記事ではセノーテの魅力を伝えると共にセノーテ奥深い歴史やその背景についても解説しよう。

セノーテが見せる神秘の世界

経験のあるダイバーにとってはカンクンと始めとするユカタン半島へ来たらセノーテで必ずダイビングをしておきたいものだが、中にはライセンスをとっていない人やダイビングの経験が浅くて、ダイビングをするか否か考えている人もいるだろう。そんな人はまず、セノーテの魅力について知ってもらいたい。

圧倒的透明度の高さ

セノーテのことを少しでも知っている人ならいかにセノーテの透明度が高いかはご存知だろう。その透明度は100mと言われており世界最高レベルであり、水中を覗くと360度どこでも遠くまで見渡すことができる。

ユカタン半島全域をつなげる最大の水中鍾乳洞

セノーテはまだまだ未踏の場所も多く、全てが把握されてるわけではないが、最長347キロメートルもの長さのセノーテも発見されている。また、ほとんどのセノーテは地下のどこかでつながっているらしく、セノーテそのものがユカタン半島の生態系の重要なインフラとなっている。鍾乳洞は迷路のように張り巡らされ、この中を進むことは最高にエキサイティングな体験だ。

ハロックライン

セノーテは淡水なのだが、海までつながっているため深く潜るとどこかで海水へ突入する。ハロックラインとはその海水と淡水が交わる場所のことだ。そこでは白い霧のようなものが漂っており、それは有機物が分解されるときに発生する硫化物なのだそうだ。大量に吸うと有害なのだが、実際にハロックラインを通過する程度では全く問題がないらしい。

光のカーテン

太陽光がセノーテに差し込むことで見える光の帯。特に透明度の高く、暗いセノーテではさらに幻想的な世界を演出する。シュノーケリングでは味わうことができない絶景だ。

セノーテダイビングの種類

基本的にセノーテダイブはオープンウォーターライセンスで入れるところやアドバンスライセンス以上でないと入れないところもあるので、少なくともある程度のダイビング経験をしておきたいところ。だが、未経験者でも講習を受けることは可能なので、諦める必要はない。多くのダイビングショップで基本的な費用である90ドルとその他オプションの追加料金で2ダイブすることができる。

フルケーブダイビング

天井が全て洞窟に覆われているため、緊急浮上もできない上に、光も届かないエリア。フルケーブダイバーでないといけないエリアだが、そのダイバーですらも多くの人が命を落としている。このエリアの入り口には必ず看板が立てられており、メインラインに沿って進んでいればこの看板を越えることはまずない。

カヴァーンダイビング

基本的なセノーテダイブはこのカヴァーンダイビングと呼ばれているものだ。フルケーブダイビングとの違いは水面周辺でのエリアでのダイビングというところだ。セノーテを進むときには目印があり、このラインに沿って進むことになる。必ずラインから1m以上距離を離さないように指示される。ちなみにオープンウォーターライセンスを持っている人でも本当はカヴァーンダイビングをすることは認められていない。実はガイドのフルケーブダイバーが必ず必須で、基本的に観光客はカヴァーンダイビングの体験という名目でセノーテダイブを楽しんでいる。つまり、セノーテダイブは全てテクニカルダイブに含まれるのだ。

セノーテの形状

メキシコのユカタン半島に来て、実際にセノーテ行く場合、様々な形のセノーテがあることを知るだろう。セノーテには3つのタイプがあり、完全な洞窟のものからラグーンのようになっているものもある。これは陥没穴が形成された経過年数などに応じてセノーテの形が変わっていくからだ。この3タイプについて説明しよう。

オープンセノーテ

オープンセノーテは洞窟のように石灰岩が天井を覆うことのないセノーテだ。このセノーテは陥没穴ができてからかなりの年数が経っているため陥没穴の上部が完全に崩れ落ちている。周囲は石灰岩の岩壁に囲まれていることもあるが川やラグーンのようになっているところもあり、ダイビング以外のアクティビティを楽しめる場所が多い。

セミオープンセノーテ

セミオープンセノーテは石灰岩が天井を覆い、上部の陥没穴から光が差し込むことで幻想的な空間を演出していることが多い。観光客に人気のセノーテも基本的にこのタイプであり、グランセノーテ・ドスオホス・セノーテイキルなどはこれにあたる。シュノーケリングとしてもダイビングとしても多くの人が訪れる。

カヴァーンセノーテ

カヴァーンセノーテは陥没穴からの光がほとんどなく、完全に洞窟となっている。カヴァーンセノーテの一部には深さ数キロに渡るものもあり、ユカタン半島の地下水脈の全域にアクセスしているものもある。現在でも未踏のセノーテがたくさんあり、未知の世界が広がっているが、勇敢に挑戦した数々のダイバーが命を落としている。

ダイビングにおすすめのセノーテ

筆者が情報を集めた中で最も人気があったのがTaj Mahal(セノーテ・タージマハル)とThe Chak Mool(チャックモール)だった。また、Dos Ojos(ドスオホス)、Cenote Angelita(セノーテ・アンヘリータ)も人気がある。ただし、アンヘリータはアドバンス以上のライセンスがいる。また、ドスオホスはシュノーケリングでも人気があり、世界で最も知られているセノーテだと言っても過言ではない。実際にセノーテダイブをする人は下記に難易度別のセノーテの名前を紹介しているのと、ユカタン半島全域のセノーテの位置にピンを打ったマップを記載しているのでそれを参考にしてほしい。

簡単:Casa Cenote・Taj Mahal・Cenote Car Wash・Chac Mool・Cenote Eden・Chikin Ha・Dos Ojos・Pet Cementry・Cenote Calavera
普通:Dream Gate
難しい:Cenote Angelita・El Pit・Zapote

古代マヤ先住民にとってのセノーテはなんだったか

実はユカタン半島には河川がほとんどない。それは石灰岩で形成された地形のため、全て雨水が地下水脈に流れるからだ。そのため、古代マヤ人にとってセノーテは生活の上で欠かせない水資源であったことは容易に想像できるだろう。実際、セノーテは雨神チャクが住む異界の入り口だと考えられ、干ばつや飢饉のときはセノーテに供え物をするという信仰の対象だった。というのも、古代マヤ人の宇宙観は天・地・地底の3つで構成されており、地底は生命の起源とも考えられていた。つまり、セノーテは彼らの宇宙観の地底に位置するものであり、セノーテに供え物をするということが、地底の神たちの平和を維持するということでもあった。

飲用・農業用の水資源

紀元前1500年ごろから16世紀ぐらいまで続いたマヤ文明。古代マヤ人は森を切り開き、主食であるトウモロコシを始め、様々な種類の豆やカボチャも重要な作物を栽培していた。現在でもメキシコの国民食であるタコスの生地トルティーヤはトウモロコシからできているのだが、マヤ文明・アステカ文明から食生活の要であったのだ。河川がほとんどないユカタン半島では水資源に乏しいため、都市もセノーテ付近に作られ、セノーテの水に頼り切っていた。雨乞いの儀式においてトルティーヤが祭壇の供え物になっていたとされているのだが、当時の状況を考えれば納得のいく話だ。

セノーテで行われる儀式

雨乞いの儀式のときにセノーテが使われていたのだが、供え物だけでなく生贄もここで捧げられたとされている。その証拠にセノーテの中からはダイバーによって人骨や大昔の遺物が発見されている。そして、その生贄を決める儀礼が球技だったと言われており、ゴムでできたボールを手を使わずにコートにある輪っかにくぐらせるゲームをすることで勝敗を決め、敗者が生贄に捧げられたという。

セノーテは今もユカタン半島のライフライン

古代マヤ文明に始まり、現代に至ってもこのユカタン半島の地においてここに住む人の生活とセノーテは切っても切れない関係にある。それは観光資源という意味だけでなく、今もセノーテは生活用水として使われている上に、ユカタン半島の自然環境・生態系を維持する上でも重要なインフラとなっているからである。過去、ユカタン半島の都市部から流れる汚水はそのまま地下水に浸透し、セノーテの汚染が問題となり、その水が海に流れることで海の汚染にまでつながった。それと共にサンゴ礁の数も過去に比べて大幅に減少しているのが現状である。今では都市部のセノーテは生活用水として全く使えないため、結局、塩素たっぷりの水道水や、コンドミニアムでは塩素入りプールの水を使用するという結果になっている。汚染の原因は下水の垂れ流しや家畜の糞便、農作物に使う農薬、ゴミなど様々だ。これから凄まじい勢いで開発が進むトゥルムにおいては、幸いサステナブルな意識の高い観光客・移住者が多いエコリゾートとなっているが、すでにセノーテの汚染の危機に関しての警鐘が鳴らされている。過去、発展してきた他の都市部と同じ道を辿らないことを祈るしかない。これを読んだ人は、ユカタン半島へ足を運びセノーテの奥深い歴史を感じながらも、神秘と謎に包まれた幻想的な世界をぜひとも体感してほしい。

セノーテが広がるメキシコのカリブ海ユカタン半島についてはこちら→マヤ文明の聖地ユカタン半島全主要スポット


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