50年前に遡るデジタルノマドの起源 01|現代版遊牧民「ホースキャラバン」

現代版ノマド「ホースキャラバン」

僕は15年前に、馬30頭を買い、20人世界中から集まった仲間で旅をした。グアテマラの国境を超え、メキシコに入り、山、川、ジャングルを渡り、リアルにサバイブしていた。おそらく、日本の端から端までくらいの距離を2年近くかけて移動しただろう。数え切れないほどの先住民族の村を通り抜け、山の中でキャンプをし、馬の世話をし、薪を集め、火を焚き、踊って、歌い、夜を迎え、また次の日に旅立つ。そんな暮らしを、愛する20人の仲間と朝から晩までずっと一緒に旅してきた。そうまさに僕は現代版ノマドの暮らしをしていたのだ。

ホースキャラバンの旅は、僕が慣れしたんだ「日本での日常」という世界観と価値観を見事なまでにぶっ壊してくれた。今まで、見たことの無い、あり得ない自然の奇跡、造形、世界を何度となく見てきた。なんでこんなに奇麗なんだろう、なんでこんなに神々しいのだろうかと。そういった場所は僕という人間に発見されるまでの間、何万年間ひっそりと待っていたかのようだ。

↓メキシコのテレビ局Canall 11(日本でいうNHK)で13週間にわたって放映されたホースキャラバンのドキュメンタリー「nomadas」のティーザー

1000の島が浮かぶ大きな湖 Lago Miguel Aleman

Google Map→Lago Miguel Aleman

見渡す限り小さな小さな島、丘が達がひしめき合って一つの湖の上に浮かんでいる。まるで雲の上に浮いている島のようだった、その雲の上を馬で超えては新しい島に行き、マンゴーの木があるところでキャンプをする。マンゴーは時々、熟した順番で木から落ちてくる。それを誰が一番先に取るか競い合う。丘と丘の間にある湖の川は浅いところが多く、1000の島を馬で渡っていくことができる。今日お気に入りの島を見つけてはキャンプし、次の日にまた別の島へ移動する。マンゴーの木々の下でキャンプすることもあれば、アボガドの木々の下でキャンプすることもあった。デジタルノマドの究極系、旅しながら生活するコミュニティという一つの生き方がそこにはあった。

ジャングルの中で発見する天然温泉

旅の間は、小さな集落以外ずっと山の中を移動し続ける。動物と植物以外何もないジャングルの時もあれば、ただひたすら続く平地の牧草の時もある。川を渡り続ける時もあり、そんな移動の最中に山の奥深く、硫黄の匂いが立ち込める川のほとりの天然温泉を発見した時の喜びと言ったらない。僕らは、基本川で水浴びしてテント生活を長年している。シャワーなどもう何ヶ月も浴びたことがない。温泉と言ったらそれはもうたまったもんじゃない、男も女もみんな全裸で温泉に入る。

ホースキャラバンのノマド生活

ホースキャラバンの生活は、キャンプ、移動、サーカス、この三つの繰り返しだ。

キャンプ

キャンプでは、料理をし、歌ったり踊ったり、話し合ったりするキッチン兼リビングの大きなコミューナルテントが中心になる。その周りに、食材や、馬具、その他のものを保管しておく倉庫テント、そして各が寝るための寝室テントの三つが大き役割としてある。そこにトイレや、薪置き場、簡単なキッチンテーブル等を作る、まるで遊牧民だ。馬の世話をし、薪を集めて、火を焚いて、朝食を作る。朝食は誰かが起きた時にコーヒーを入れるところから始まる。

朝食後は村に食材や壊れた馬具、馬食を買いに行ったり、次の行先の情報収集に行ったりしている。歌歌ったり、太鼓叩いたり、日記を書いたり、それぞれが自由に過ごしている。馬の世話をするのがキャンプでは大きな活動の一つ、最低三人で馬を預けているフィンカ(メキシコでは田舎はほぼ牧場か私有地となっていて、誰かか持っている土地を貸してもらうことで馬を囲うことができる、と言っても山一つ分くらいの大きさなので、特に整備されているわけでもなく、ただ大きく柵がされているのみである)まで歩いていく。山の中でロープ一本で馬を捕まえて、馬に鞍も乗せずにロープ一本のみでハミを作り乗る。馬は群れる習性があるので、一頭目を乗って走り出すとみんな後からついてくるのだ。そうしてキャンプまで連れてきた馬をみんなで世話をする。蹄鉄をつけたり、毛並みを揃えたり、注射を打ったり、栄養豊富な餌をあげたりする。

移動

移動はホースキャラバンの生活の中の醍醐味だ。
朝日が上がってくる前に起き始める。コーヒーを飲み朝飯を早めに済ませる、その後自分たちの荷物を片して、寝室テントを片す。コミューナルテントを片し、キッチン用品を片付け、倉庫テントから馬具を馬ごとに配分する。他のメンバーは起きたらすぐに馬を収集しに行き、馬の世話をする。鞍を馬に乗せて縛る、馬銜をを着ける、カーゴホースと僕らは呼んでいる荷物を運ぶ馬にはハーレダビットソンの両サイドについているようなカバンを4つつけて、荷物を入れる。まるで、戦場に向かう戦士の気分、この時ほどワクワクすることはない。

移動の時はチームに分かれる3チームに分かれて、先頭チーム、中継チーム、後方チームに分かれる。先頭チームは日が暮れる前に早めに現地に入ってフィンカのオーナーと交渉したり、もしいく先で問題がある場合に事前に対応しておくためだ。中継チームは先頭チームと後方チームで問題が発生した時に中継する役割がある。多くの場合、中継チームが大きなチームになる。先頭チームは2、3人で基本走って現地に向かう。後方チームはコミューナルテントやトイレ、プラスティック製品の処分等の後片付けや、お世話になった近所の先住民の村に挨拶をしに行ってから現地に向かう。そして旅立ちだ。

旅立ちはいつも新鮮だ。いつも見たことのない風景と体験に出会うから。何もかもが新しい。時にはフラットな牧草地が現れて、みんなで整列して競馬みたいに競争してみることもある。山の岩々しい斜面を馬から降りて駆け上がったり、垂直の崖にある道で片方が数百メートル崖の道を行くこともある。

マンゴーだらけの森を行くこともあれば、たまには国道に出て、アスファルトの道を車が横切る横ギリギリを移動することも。旅の途中ではよく問題が発生する。馬が故障したり、カーゴホースの荷物がこぼれ落ちてしまったりする。もしくは道が途中で土砂崩れしていたり、ジャングルで遭難してしまったりすることすらある。大雨が降ってきた時はその場で作戦変更してキャンプをする。大きな川を馬とともに泳いで渡る時もある。

そんな自然を相手にすると何が起こるか全くわからない。問題だらけだけど、それが最高にエキサイティングな瞬間でもある。全くどうしたいいかわからない状況に慣れすぎて、何でもオッケーとなるのが、キャラバン隊の強いところ。そして村を通りすがる時は、村中の人が大騒ぎして駆け寄ってくる。特に子供たちがキャラバン隊の後ろに何十人、時には何百人ついてくることだってあった。急に芸能人になってしまった気分だ。大きな街に行く時はそこでサーカスをする。その時は本当にその街の芸能人になる。

サーカス

サーカス。これは僕たちの仕事だ。金を稼ぐのだ。
僕とカリーンは2人で先住民の街につくと仕事を取りに行く。街の中心には必ずプラサと呼ばれる大きな公園、広場がある。その広場沿い必ずあるのが、ムニシピオと呼ばれる役所がある。僕らは馬の旅中もシャキッとした服装やスーツを持ち歩いている。そのシワシワになったスーツを二人で着て、髪の毛は1人は超長髪でもう1人は弁髪だ。しかも先住民の街では誰も見たことのない、変な日本人とイスラエル人。僕らはいっつも、プレジデンテ(市長、町長)がいる部屋に直接いってドアをノックする。大体この普通じゃない2人をみるとすぐに部屋に入れてくれて話を聞いてくれる。そこで僕らは一種のサーカス集団であると、サーカスを街のプラサでやりたい、その意義と僕らの旅の話をする。すると大概はびっくりしておおめちゃくちゃ面白そうだから是非やってくれとすんなりと話が進む。そうやって僕らは生活費を稼ぐ。仲間とともに旅という日常を生きていくためだ。のちには小学校や中学校で環境教育をしたりリサイクルステーションを作ったりといろんな環境活動をし始めたりもした。

そうしているうちにショーの日程は決まり、僕ら素人のサーカス集団は死ぬ気で練習するのだ。ファイヤーダンスや、ギター、太鼓、アクロバットな演技を練習する。しかしそこまで心配はしていない。、なぜなら、僕らは世界20か国からきたという最強のコンテンツを持っているから。僕はいっつもステージで自己紹介をする。「日本という皆さんが知らないかもしれないけど、中国の隣の島国からきました(メキシコの田舎の人は世界はアメリカ人と中国人とメキシコ人しかいないと思っているw)今から日本語で島唄っていう歌を歌います」こうやって話すと誰もが感動する。地球の反対側から来た知らない変な国の人が変な国の言葉を使って歌を歌っている、彼らはもちろん聞いたこともない。彼らにとっては初めての体験でしかない。それが20カ国分続くなら全然怖くない。そう僕ら素人サーカス集団はメキシコの田舎において無敵だった。

↓この三つのホースキャラバンのノマド生活全体が見れる動画
(かくめいプロジェクトの最初の動画として2014年に撮影に行った時の動画)

「常識」とは18歳までに身に付けた偏見のコレクションである。

アインシュタインの名言。僕の大好きな名言の一つ。僕のなかで日本の「常識」は旅をする中で、ほとんど溶けて無くなっていった。自由な発想をし、自由な生き方を選んだら良いのだと、思うことができるようになった。そんな旅だけれども、どうも僕にとっての旅は行って帰ってくるものではなく、行きっぱなしな旅だったようだ。ノマドの終わりのなき旅。それもまた一つ「常識」から解き放たれた生き方の一つなのだろう。

ここではキャラバンの話は概要だけで、馬で国境をこえて、メキシコの軍隊に捕まる話や、チアパスのラカンドンジャングルで遭難する話や、旅の情景をドキュメンタリーとして書いていく、詳細は→別シリーズの「ホースキャラバンの旅」にて配信していく。

今回の「50年前に遡るデジタルノマドの起源」シリーズでは、一体「ヒッピー」とは何か、根源的な意味での「マインドフルネス」とは、そして彼らのムーブメントがどのようにして作られ、それが現代社会においてなぜ必要なのか、「ヒッピーネットワーク」について僕の体験話を織り交ぜながら、解き明かしていく。

次回→ 僕らは馬で旅をするというライフスタイルを取ることで、24時間365日「マインドフルネス」で居続ける、あまりにも美しく、奇妙な体験を獲得したのだった。

僕のホースキャラバン時代の写真集→Equus Humanus

©️Yoshihiro Koitani

All Pictures are copyrighted by Nomadsunited members and Yoshihiro Koitani.


現在進行中のプロジェクト

〜世界中が居場所になる「ファイナルランド」を作る〜

現在進行中、村づくりエンタメ番組「#かくめい」

https://www.youtube.com/user/KakumeiMinna

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