世界にある、人生を変えてしまう圧倒的体験ができる施設「リトリートセンター」とは?

リトリートセンターとは

リトリートセンターは一言で言うと、精神性をアップデートする道場である。 精神性と聞いてもピンとこないと思うので、もうちょっと砕いてみる。究極的には、自分がなぜ人として生まれてきて「存在」しているのか、客観視できない自我と言う「自分の意識・無意識」をより深く知ること。だと僕は解釈している。なぜだか誰にもわからないが、僕らは「存在」し「意識」があると認識している。そしてそこには複雑な社会と、人間関係がある。意識をより高次の認識で捉えることで、その複雑な社会や、人間関係と言う「外面」と、自分という「内面」の関係性の理解を深めていく。そういうことが学べる場所である。つまり人生そのものである。

リトリートセンターの本来の意味は、リ・トリートする、つまり、何もしないでリラックスしたり、のんびりして体、精神を休めると言う意味がある。しかし、リゾートに行ってゆっくりすることがリトリートではない。現代におけるリトリートとは、精神性をアップデートし、より良い人間関係と暮らし、より幸せな価値観を手に入れることにある。それは、お金、名誉、権力などの、「外面」から来るものではなく、「内面」から来るもである。

ではどうやってリトリートセンターができたかと言うと、ヒッピームーブメントと直接のつながりがある。

ヒッピーについてはの詳細はこちら→50年前に遡るデジタルノマドの起源 03|ヒッピーとは?人生とは計画を立てている間に起こる他の事柄である。

ヒッピーとリトリートの意外な関係

リトリートの歴史はヒッピーが台頭してきた60年代まで遡る。ベトナム戦争を期に政治、経済、社会のあり方に疑問を持った若者たちは、既存の価値観に縛られずに、お互いを助け合うヒッピーネットワークを築き上げる。世界中に広がった非ッピームーブメントは随時何百万人と言う数のヒッピーたちが世界中をくまなく旅した。そしてある種共通認識として「レインボーファミリー」と言う概念を持っていた。知らない人もヒッピーはみんな家族だ、と言う価値観だ。その価値観はあっという間に世界中に浸透し、世界中の何百万人のヒッピーたちは知らない同士にもかかわらず助け合った。そうすることで、彼らは世界中の情報を口コミのみで世界の反対側まで1日で届け会うことに成功した。いわゆる「人力SNS」を50年も前に発明したのだった。

秘境の発見

彼らは世界でも有数の美しい場所を見つけるのが得意だった。世界を旅したヒッピーは、誰も知らない圧倒的な景色や、地理、風土を理解していた、世界中の秘境を発見し、その情報を常に共有していた。それは、水であふれている鍾乳洞や、活火山に囲まれた世界一美しい湖、大航海時代にスペイン人が見つけることのできなかった、崖のようにそそり立つ大地の天上界だった。そう言う場所にはいつも先住民族がいた。世間一般には訪れることのない秘境の世界だ。

Ocotitlan Morelos Mexico

先住民族との出会い

リトリートという文脈で先住民族を分類して、以下のタイプに分けてみる。

  1. 絶対数が大きく、固有文化を保っている先住民族
  2. 侵略されずに固有文化を保っている先住民族
  3. 侵略されてしまい、形骸化し、文化が損なわれた先住民族

1. はラオ族の住んでいる国ラオスや、日本人も僕の中では先住民族と呼んでいる。固有文化をキープし、今でも先祖代々伝わる儀式をしている民族。

2. はメキシコではウイチョル族(幻覚作用のあるサボテンを儀式に使う)やタマウマラス族、ブラジルではフニクイン族等、世界にたくさんある。

3. は日本の沖縄やアメリカのナバホ、ホピ族等。先進国における多くの先住民族の文化はその国のものと同一化してしまっている。

今回話しているのは主に、2の先住民族を対象にしている。彼らは世界の動向に巻き込まれずに、今までオリジナルの文化を保って来た先住民だった。彼らの特徴は見つけづらい奥地に住んでいたことや、地理的に経済的に価値を見出せなかった、砂漠やジャングルに住んでいた。

さて、こういった先住民族の世界にこぞって足を踏み入れたのは、インディージョーンズではなく、ハリウッドでもなく、軍隊でもない、ヒッピーたちだった。彼らは価値観の違いや、階級、生き方の違いで人を分け隔てることなく先住民族たちとも仲良くなることができた。 そして、先住民族の価値観、生き方に初めて触れて、今までの価値観が消え去り、その存在に圧倒されるのである。 ヒッピーは「生きる本質」を知るのである。

先住民族の暮らし

先住民族の集落は多くの場合150人くらいの規模になる。なぜなら人間が一度に認識できる人数が大体150人ぐらいだと言われている。それは日常生活の中で関係性を深めることのできる最大の単位であり、共に助け合うことのできるちょうどいい人数なのだ。

我々現代都市生活者は石油からエネルギーを得て、産業があり、衣食住の大半をアウトソージングしている。お金を得ることで、それを対価にありとあらゆるものと交換する。余った時間は余興として自由に暮らす。しかし彼らは自給自足をしているのが普通だった。近代社会のようにエネルギーを石油や蒸気機関から得ていたのではなく、エネルギー源は人や動物。自分たちの時間をフルに使って初めて生活が成り立つ。そして150人の集落の一人一人がお互いに役割分担して助け合うことで初めて生活が可能になる世界だ。想像してみて欲しい、日本の集落でも茅葺き屋根の張り替えは集落全体で茅を毎年集め、毎年一軒づつ屋根を交換していくのだ。先住民の村に行くと女性は服を手編みしていたりする。聞くところによると、一枚の服を編むのに丸1ヶ月かかると言う。ユニクロに行って二千円出せは即座に手に入るものを、1ヶ月の労働で手に入れているのだ。そう考えると150人が助け合うことでなんとか生活が成り立つと言うのは想像に難しくない。ましてや余興などなかったのだ。

Lago Atitlan

儀式との出会い、リトリートの誕生

そんな中で、ヒッピーたちが出会うのが、儀式だ。 どこの先住民族の村に行っても必ず行われているのが、儀式。では儀式とはなんなのかと言うと、儀式とはコミュニティの人間関係における潤滑油だ。150人で助け合っていると中には、気の合わない仲間もいる、時には喧嘩もして、派閥ももちろんできる。しかし、お互い助けあわないと生活が成り立たないのであれば、その気の合わない仲間や、派閥とも手を組んで一緒に動いていかないといけない。そう言う時に、潤滑油になるのが儀式であると知る。例えば、日本で言えば、だんじりを引いたり御神輿を担いだりする。神を崇め奉納すると言う自分たちはもっと大きなもの(自然)によって生かされていると言う価値観だったり、それを神聖化するために装飾をしたりだんじりを引いたり、御神輿を担いだりする。そしていつも最後は酒でベロベロになるまで酔っ払う。、そうすることで、老楽男女全てのメンバーがヒエラルキーから解放され、自分の腹の中をぶちまけて、お互いを理解し一つになる。そう言うコミュニティとしての潤滑油の役割をしているのが、儀式だった。

鞍馬寺 京都

それに欠かせないのは、精神性のアップデート。人間関係と言う「外面」と、自分という「内面」の関係性の理解を深めていくことで、より良い人間関係と暮らし、より幸せな価値観を手に入れることにある。 儀式では、意識を変容させることで、より内面に入っていく手助けをする。例えば、過呼吸にすることで意識変容させることもある。スーフィーは、体を回転させ続けることで、三半規管を麻痺させて、意識を変容させる。ネイティブアメリカンの儀式の一つにビジョンクエストと言って、テマスカルという儀式を行うサウナに入り、脱水状態になって、山の中に入り誰も見えない一畳くらいの場所を選びそこから三日三晩飲まず食わずで瞑想する。サンダンスは太陽が輝っている間三日三晩食わずに踊り続ける。または幻覚作用のある植物をとる民族もいる。もちろん酒もその一つであり、もっともポピュラーな方法の一つだ。 様々な儀式は全て共通している。意識を変容させることで、自らを客観的に見つめ直すその方法論だ。

San Andrés Jalisco Mexico

僕の旅の体験話「ウイチョル族との砂漠巡礼と神秘体験」についてはこちら。←後日投稿します

リトリートの一つと言える、ヴィパッサナー瞑想

先住民族の儀式と別だが、ヴィパッサナー瞑想というのがある。ヴィパッサナー瞑想は10日間誰とも目を合わさず、誰とも話さず自分の内面と完全に向き合う方法の一つだ。仏教の教祖と言われているゴータマシーダルッタが導き出した瞑想法であり、ミャンマーで2563年前に生み出されたこの瞑想法は、世代から世代へと受け継がれ今に至る。その非常に論理的で斬新な瞑想方法は10日間かけてみっちり学ぶことができる。日本でも千葉と京都に二箇所ヴィパッサナーセンターはある。ヴィパッサナーの教えは、サンカーラという反射的に反応してしまうエゴ(例えば熱い鍋を触った時に反射で手が動くと言ったような反射と同じく、エゴもまた反射(無意識)であるという考え)を止める事は「意識」ではできない。ならばその無意識をいか肉体に表す事で、その無意識を消していくかを具体的にロジカルに学べる瞑想方法だ。

詳しくは→【ヴィパッサナー】今でも残る、2500年前にブッダ(釈迦)が開発した、「悟れる」瞑想法とは

リトリートセンターはどうやってできたのか

さて、ヒッピーはかくして、世界中の先住民族たちと共に暮らし始めた。彼らはその儀式の一つ一つをヒッピーネットワークで共有し始める。噂が噂を呼び、多くのヒッピーが訪れてはまた新しい場所を開拓する。そうしていくうちに、世界の先住民の儀式はヒッピーによって再編集、再構築、そして体系化され始める。つまり、ステップ1,2,3で、「より幸せに生きる方法」、「苦しみから逃れる方法」、「悟りを得る方法」を編み出したのだ。もちろんそれは概念的な話(自己啓発本)ではなく、身体性(体験)のあるものだ。体験をするために、人は集まるようになった。それがリトリートセンターの始まりだった。

Lago Atitlan Guatemala

リトリートセンターではこういったそれぞれの創始者たちが旅する中で培った儀式を独自に体系化したコースを受けることができる。それはヨガのようなポピュラーでイージーなものもあれば、ビパッサナ瞑想のように、10日間誰とも目を合わさずに誰とも一言も話さずに自分の意識を内面に向ける瞑想方法もある。そして、アヤワスカ(アマゾンの先住民が儀式に使う煮込んで飲む、幻覚作用のある蔓。成分のDMT(ジメチルトリプタミン)は、臨死体験の原因物質「魂の分子」とまで呼ばれている)を使用して行うコースまで、場所によって様々である。リトリートセンターは主に意識のかくめい(精神性のアップデート)のために存在しているが、最近ではもっとイージーで、ヨガ、ピラティス、ダンス等フィットネス的な役割をしているところも多い。

日本ではリトリートセンターはまだポピュラーではないが、今後人工知能や自動運転等が始まり、単純労働作業がAIにとって変わる時がもうすぐそこまで来ている。

仕事がない世界における人間の興味の対象は、幸せを追求することであり、アート、哲学といった内面の探究になってくるだろう。

リトリートではそういった生きることそのものの追求をする道場であり、個々人の内面的な幸せを獲得することで、世界平和を目指す

Lago Atitlan Guatemala

ヒッピーが開拓した、絶景の場所場所はのちにリゾート地となっていく先駆け

こうしてリトリートセンターを作っていったヒッピーの先人たちが、発見した秘境の村々は、元々、先住民しか住んでいなかった。そこにヒッピーが1人、また1人と現れて、地元の先住民族と仲良くなっていく過程の中で、少しづつそこに住み着いていく人が増えていく。最初にできるのは、カフェだ。そこに人が集まる仕組みができることで、少しづつヒッピーネットワークを通して人が集まり始める。そうして、ゲストハウスができてバックパッカーが泊まりに来るようになる。その時には先住民族もツーリズムの仕事を始める。ここで村は一気にツーリズムへと舵を切っていくのだが、ある一定の認知度を得ると、急に不動産投資家や大手リゾートホテルが集まり始めて一大リゾート地と発展していくのだ。多くの場合リゾート地はヒッピーが発見した秘境の場所だったことが多い。それはヒッピーたちが先住民文化に興味があり、また彼らのネットワークを使うことで世界中から人を集めることができたからに他ならない。ネット、ソーシャルメディアが普及した現在では世界中は発見し尽くされたかのように見えるが、ネットがなかったその当時にはそんな秘境を発見することは非常に難関なアドベンチャーでもあった。

僕の旅の体験話「様々な世界の儀式まとめ」にいろんな儀式の体験話を書いていこうと思う。←後日投稿します

Nehan Retreat Village

八ヶ岳にあるリトリート施設 「Nehan Retreat Village」 にて、さまざまなリトリートを開催しています。リトリート情報はfacebookで発信しています。興味ある方はフォローしてみてください。

https://www.facebook.com/nehan.retreat.village

リトリートは日本だけでなく、メキシコ、トゥルムでも開催しています。こちらはfacebookグループで配信していますので、興味のある方はぜひグループに参加してみてください。

世界・日本中のリトリートセンターが探せるAirbnbのようなサービス

NuMundo Japan(ニュームンド)

僕の会社で2017年に日本でローンチしたサービス「NuMundo Japan」。

世界中・日本中にあるリトリートセンター・サステナブルコミュニティが探せる。現在、世界中で約1000件の施設の登録がある。いわゆるAirbnbの体験のように簡単にリトリートを予約でき、サステイナブルコミュニティは宿泊施設も提供しているので、宿泊の予約もできる。住み込みのボランティアワーカーも募集しているところもある。

サステイナブルコミュニティは元々ヒッピーたちが探し出した秘境が多く見ているだけでも行ってみたくなるような場所ばっかりだ。しかも、いわゆる観光地やネットでは見つからないマニアックな秘境にそういう場所はあったりする。

NuMundo Japan
http://numundo.org

TABI LABO記事
持続可能な暮らしを育むコミュニティで宿泊・体験『NuMundo Japan』

NEUT記事
「消費=幸せ」ではなくなった日本人へ。渋谷区在住ヒッピーが語る、“今”に満たされる豊かな村生活の魅力

アップルのスティーブ・ジョブスは元々ヒッピーで、「悟り」を得るために二十歳でインドに修行に行ったのは有名な話。世界のリゾート地もおおよそヒッピーが60年代に開拓した。バーニングマンのように新しいコミュニティの形を作り。ビーガン・ベジタリアン・オーガニックブームなど、現代で流行っているものを今から遡ること、60年も前から当たり前のように実践していた。
リトリートは、彼らが求めた人間らしく生きるための社会からの解放から始まった。今となっては「悟り」は科学されるようになった。次に我々が向かう先は、テクノロジーで追求される「幸せと不老不死」なのかもしれない。

悟りを科学する現代、未来の精神世界はこんな風になっていくと思います→「資本主義、最後の市場は「不老不死」と「悟り」Vol.01」

All Pictures (without copyright next to the picture) are copyrighted by Yoshihiro Koitani.