50年前に遡るデジタルノマドの起源 02|24時間365日「マインドフルネス」で居続ける方法とは?

時間が溶けて、無くなっていく感覚

ホースキャラバンで旅するノマド生活はいつも自然の中、世界は自然と30頭の馬と僕たちだけだった。つまり、基本朝から晩まで会話ができるのはこの20人のメンバーだけだった。半年くらい経った時、気がついたら、何月何日何曜日か全然わからなくなっていた。そして時間が溶けて無くなっていくのを感じ始めた。

ホースキャラバンとは?前回の話→50年前に遡るデジタルノマドの起源 01|現代版遊牧民「ホースキャラバン」

毎日、薪を集めて、火に焚べて、料理を作っていた、火を見ない日は1日もない。生活をする中で火を一体どれくらいの時間観続けただろう。火の形は一瞬たりとも同じではない。ある時、川のほとりでキャンプしている時、川をずっと眺めていた、そうすると鳥が二匹違う方向から川を泳ぎながらお互い近づいて行った、そして戦い始めた、クチバシでつつき合いながらめちゃくちゃ感情的になっている。その様子をボーッと眺めていて、少し経つと、2人とも背を向けてまた泳いで反対方向に遠ざかって行った。その時に2人とも翼を広げて羽から水を落とすようにした。彼らはすぐに戦っていた過去を忘れさり、「今」に戻って行った。

僕らの生きている時間は大きく分けて二つのことで測ることができた。太陽と月、二つのリズムが時間を生み出す

太陽と月のリズム

太陽は1日の時間を、月は1ヶ月の時間を教えてくれた。そう、僕らは自然のリズムと完全に一体化したのだった。太陽の位置は今から何をしないといけないかを教えてくれる。例えば、馬で移動している時に太陽の位置が地平線から30°のところになったら、急いで次なる牧場を探し、牧場主と交渉し、馬の世話をし、テントを貼って、薪を集めて、火をつけて、野菜を切って、料理を始める。そうしないと暗闇の中で一連の流れをすることになるが、これはかなり難しい。だから毎日毎時間太陽の位置を観ている、太陽の傾くスピードと自分の行動とがリンクし始めるのだ。

月はもっと壮大だ。月は満月と新月を行ったり来たりする。みんな知っていることだけど、その月の満ち欠けを29日間かけて体感する大きな光のショーなのだ。例えば、新月の日は、キャンプではたった5メートル先に人がいることすらも気づかない。完全なる漆黒の世界だ。これでは薪集めも料理もへったくれもない、太陽が沈んだら寝るのみだ。少しでも月が満ち欠けてくると、少しずつ光が注ぎ始める、その光の量は、日に日に増え始める。そう見えるということは活動範囲が広がるということ、月が半月になるころにはみんな夜活発に動き始める。

歌を歌い、踊り、深夜まで語る仲間も出てくる。まるで月の動きと僕らの動きが呼応しているかのように。そして満月を迎える。満月の月の光量はまるで月の1人勝ちのスペクタクルショーだ。上空から注ぐ光の束は、森の木々を通り抜け月影と光がこれまでかというほどにシャープに陰影を作り、全ての景色が完全にクリアに遠くまで見渡せるようになる。月を神と崇めるのもわからないでもないなと思わされる。

そして僕らは馬に乗って夜中に移動することになった。ただひたすらに山、川、田舎道を月をめがけて、歩いていく。月を中心に陰影が作り出す奇妙な映像美のショーが絶えず変化し続ける。動物の声と馬の蹄の音しか聞こえない、アバターの世界そのものだ。その景色は残念ながら写真では残せなかったけど、それはそれはこんな世界があるのかと思わされるほど深淵な体験だった。

そして、それは29日間のリズムで毎月訪れる。月と太陽。このリズムに完全に調和してそのリズムを乗りこなし日々を生き始め、半年くらい経った時、ふと不思議な意識になっていることにみんなで気付き始めた。

それは時間の感覚が溶けて無くなってしまっていたこと。それは動物だったり、火の揺らめきだったり、川の流れだったり、そう僕らには時間を認識することができなくなっていたのだ。過去と未来を考える時間、思考の時間、そういうものがすっ飛ばされて、今をただ生き続け、瞬間という連続の中に生きていたのだった。それは刹那っていう言葉なのかもしれない、今時の言葉でいうとマインドフルネスという言葉があっているのかもしれない。瞑想してマインドフルネスになるのではない。

僕らは馬で旅をするというライフスタイルを取ることで、24時間365日「マインドフルネス」で居続ける、あまりにも美しく、奇妙な体験を獲得したのだった。 
 

©️Alex Grey

マインドフルネスとは一体なんなのか

我々が普段使っているカレンダーは「グレゴリオ暦」という。実はこのカレンダー、大昔から時代とともに変化して、規則性のないカレンダーとなっている。月暦のカレンダーでは1ヶ月は29日周期で1年は13ヶ月ある。これは月、太陽、地球の位置関係によって引っ張り合う重力関係が変わる。海に波が立つように、人間にもこの重力に影響を受けている。当たり前のことだが、人間以外の動物や植物はこの月暦のリズムで動いている。月と太陽のカレンダーは自然に戻っていくリズムをもたらしてくれる。まさに、過去と未来を考えない、「今」であり続ける「マインドフルネス」になるリズムを持っている。

しかし、グレゴリオ暦は太陽系の重力関係とは何の因果関係のない周期で動いている。なので、このリズムから外れて、時間を細分化することで、合理的に時間を消費する。

時間の流れは、相対的というのは周知の事実で、早く過ぎる時もあれば、長く過ぎる時もある。どんな時に短くすぎて、どんな時に長く過ぎるか、その違いはというと、新しい体験をどれだけしているかということ。同じルーティーンのなかで毎日朝コーヒーを飲んで、同じ職場に行き、同じ人と、同じ話をして、同じルートで、同じことを考えて自宅に着くのならその日はおそらく無かったと同じくらい早く過ぎるだろう。反対に、行ったことのない場所に、使ったこともない手段で移動して、知らない人と会っているのなら時間は圧倒的に長くなる。

特に一番長く感じるのは、圧倒的体験をする時だ。ほとんどの人が1ヶ月前の水曜日の昼に食べた料理を覚えていないだろうが、初めてキスしたときのことは誰でも覚えている。時間を区切って予定を詰めていろいろ活動していても、新しい体験をしないと時間はあっという間にすぎていく。

実はマインドフルネスとは、新しい体験をし続けるマインド(思ったように事が運ぶ流れに乗るアンテナを張る)を持つということだ、と馬に乗っている時に気がついた。

結局、人は今を生きることで人生に大きな意味と深み、そして幸せを感じるのであれば、時間によって日々を区切っていくのではなく、実は出来るだけ時間を感じないような暮らしをする方がより多くの体験をすることができる。

ただ思いっきりこの瞬間を楽しんで、自分が描く未来をビジュアライズし、それが現実化する波に、うまいこと乗るための準備をすることだ。#それには何もしないことの方が大切なのだ。

次回→常識を疑い、時間が溶けて無くなる感覚「今」を生きる「ヒッピー」は一体どこから生まれて、何を成し遂げたのか?

All Pictures are copyrighted by Nomadsunited members and Yoshihiro Koitani.


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